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ユニック車転倒の原理

ユニック車転倒の原理

 

 以前顧客より、ユニック車で配電盤を設置する際、そのユニック車が絶対に転倒しない事の説明を書面でしてほしいとの依頼がありました。パソコンの整理をしていたらその際作成した資料が目に付いたのでここで書いてみたいと思います。

 移動式クレーンのほとんどは、その原理が天秤(やじろべえ)に拠って成り立っています。品物がある側のユニックのアウトリガー(足)の地面接地点を“支点”とし、ブーム(竿)が“腕”の部分、吊る品物(配電盤)とトラックの車体を“重り”と考えて解説します。

 まず、やじろべえが吊りあっている(成り立っている)状態とはどういうものか?

 これは片側の“重り”と“腕”の長さの“積(掛け算したもの)”と、もう一方の“重り”と“腕”の長さの“積”が等しい状態をいいます。ちなみにこの“積”の単位を“モーメント”といいます。

 この時の現場に当てはめると『配電盤の重量と支点までの距離の“積(掛け算したもの)”』と『トラック車体重量と支点までの距離の“積”』が等しい場合が吊りあっている状態で、いつ転んでもおかしくない状態になります。ユニック操作をちょっとしゃくるだけですぐにひっくり返るでしょう。これをモーメントが吊りあっている状態といいます。

 ユニックの旋回中心点から設置場所までの距離が9m(途中障害物の為トラックが入れない)、配電盤の重さは300kgで、トラックの車体重量が6トン、そのトラックの重心から支点(アウトリガー)までの距離は3mです。

 

まずトラック車体側。

車体重量6,000kg×3m=18,000kg・m(モーメントの単位)

となります。

次に配電盤側。

配電盤300kg×6m=1,800kg・m(モーメントの単位)

となります。

18,000÷1,800=10(倍)

 

 この場合10倍のモーメントの差があるため、配電盤(品物)の側に腕が振れる(支点を中心に時計回りに腕が動く)事はありません。仮にユニック操作を誤ってブームをしゃくったとしても、じゃくった場合の重量増加(3倍)にも耐えて余りあるモーメント差があり、ユニック車が転倒することはないでしょう。

但し、支点(アウトリガー:足)の下に下水管や浄化水槽などがあると強度的にもたないため転倒の恐れが出てきます。よって万が一に備え、アウトリガーの下にはより面積の大きな敷板や鉄板を敷いて、接地圧を下げる事が常識として必要です。そうすることによって予想外のトラブルを回避することができます。

 

 このころ、大手メーカーの工場現場にてユニック使用禁止という事がありました。その何日か前、別の業者がユニック操作を誤って転倒事故があったそうなのです。操作の基本を身に付けていればそういう事は考えられないのですが、はっきり言って迷惑な話です。横着したり、面倒臭がったりするような人たちと同列に扱われる・あるいはそのあおりを食うのは忸怩たる思いがあります。

 しかし、よく考えると別の原因がある事に気付きました。いわゆるリモコンの弊害です。

 最近のユニック車にはほとんどにリモコンがついています。作業しながら同時にユニックも扱えるので大変便利ですが、トラックから離れるという盲点がありました!コストの高いリモコンは昔に比べてかなり普及しましたが、リモコンにはリモコンなりの基本・注意点があり、それに比してあまり教育されていないのが現状でしょう。

 リモコンがあれば、品物の傍についていたくなるのが人情ですし、その結果トラックが傾いていたり、反対側のアウトリガーが浮いていても気づかないのです。転倒事故が多いのはそういった原因もあるのではないでしょうか。

  

 左の写真は私がユニックを使っているときの写真です。

 お恥ずかしながら、ポーズをとっている訳でも、格好をキメてる訳でもありません。

 右手はレバー、左手はアウトリガー左一杯、自身の右足は車体の一部に載せて、この3点で車体の傾きを感じております。そうすればどのような状況であれ限界を察知することができます。

 横柄な態度にみえましたら不快にさせた事、この場を借りてお詫びいたします。

 

 

 また、私はここぞという時、あるいは精密さが必要な時はリモコンを使いません。レバーストロークの短いリモコンでは微細な動きが困難であるし、ギリギリのシビアな仕事では向かないでしょう。“道具”には“道具”なりの使い方があるといったところでしょうか。

 

 長々と手前味噌を書いて参りましたが、これを読んで頂いた若い方の安全の一助になればと思いました。

 えっ!「そんなことは当たり前や!!」と思われた方、失礼いたしましたm(_ _)m

2015/07/06